どこの学校にも「教務内規」という規則があってこれに基づいて教育関係の業務は動いています。例えば、テストの平均点などもこの中にはっきりと何点から何点の間というように書かれています。これは、テストを作るとき生徒の理解度に合わせた内容にすることというしばりになります。
「分かる授業」とはどんな授業かと突き詰めるときちんと聞かすことのできる授業であるということができます。これを実践している場所が全国にありました。全国にある運転免許試験場の安全運転講習です。そこでは、安全運転に関するビデオを受講者に確実に見せる工夫をしています。どんな風な講習の進め方をしているのでしょうか。
私の授業は化学なのですが実験器具を教室に持ち込んで「何をするのかな?」という関心を引き出しそれをきっかけとして授業の中身に生徒を引っ張っていく工夫をしています。
学校には「教務内規」と言う規則があります
敵を知り己を知れば百戦危うからず(孫子の兵法)と言われるように、授業をするに当たっても敵ではありませんが、生徒の到達状況を知らなければ授業の進め方が決まりません。どのような生徒を対象に授業するのか決めないと話が前に進みません。ここでは、中学校で真ん中ぐらいの成績でちょっと勉強は苦手という生徒を対象として話を進めたいと思います。ちなみに、私の教科は理科で科目は化学です。
学校には「教務内規」という校内規則があります。「教務内規」のない学校はありません。なぜなら、この中には生徒の学習に関するありとあらゆる規則が収められていてこの規則をもとに学校本来の業務が運営されているからです。
例えば、定期テストを実施した時にテストの平均点の収まるべき範囲も学校によって多少の違いはありますが「教務内規」の中に明記されています。私の経験では平均点の上限は60点台の上の方に設定された学校が多かった気がします。平均点が70点を超えると易しすぎで60点を切ると難しいテストという認識でしょうか。どちらにしても、生徒の理解度に合わせたテストのレベル設定が要求されていることを意味しています。
「分かる授業」とはどんな授業?
さて、「分かる授業」に話を戻します。よっぽどレベルの高い内容をしゃべらない限り普通の授業の話は聞けばわかるものだと思います。ただし、一コマの授業(多くの学校で50分)を居眠りもさせずに、無駄話もさせずに聞かすことができたら、それは大成功即ち「分かる授業」と言えるのではないでしょうか。これが簡単にできるようなら、今現在このブログを読む人はいないはずなんです。
人に話を聞いて貰わなければならない多くの現場では、いかにして聴かせるかということに心血を注いでいます。その例に上げるのに相応しいところがあります。全国の都道府県にある運転免許試験場の免許更新講習です。ここでは、安全運転講習を通じて交通事故をなくし交通事故死を減らせという大原則が存在するもとに講習(授業)がなされています。
優良ドライバー向け講習はさておき一般講習の会場では1時間で講義とビデオを見ます。ここでは徹底してビデオを見ることを受講者にもとめます。居眠りをしそうになると、係の人が注意するのです。そのやり方は徹底していますから、うかつに眠れません。自分の経験から言ってもビデオを見ていると事故の原因や自分にも起こりそうなことが次々出てきてついに最後まで集中して見てしまうのです。
見終わったあと、ちょっと賢くなったような気分になっているのは不思議なものです。このケースでは運転免許センターの担当者もはじめの部分を見せることができたらあとは大丈夫とわかっているんじゃないかと思います。これはどう考えてもビデオの内容に命にかかわる情報が入っているから真剣に見聞きするんだと理解できます。
学校での聞かせる工夫は
それでは、実際の授業ではどんなふうにいわゆる「まくら」を設定して本題につなげるのか、お話を進めたいと思います。「まくら」話でこちらを向かせて、気が付かないうちに本題に引きずり込むという作戦です。
化学の第1時間目の内容です。「古くからの(古典的な)化学は物質の分離・精製が中心であった。」というのがタイトルです。化学は実験道具が色々あります。これを教室に持っていって小道具として使います。お茶やコーヒーを飲むと眠れなくなることは昔から知られていた。と説明しながら小道具を出します。
ガラスのビーカー(300ML)に茶葉を入れ、赤のタータンチェックのAradin(製造メーカー名)の魔法瓶で熱湯を入れる。お湯の中に緑茶の成分が「抽出」され薄緑になる。
黒板に「太平の眠りを覚ます上喜撰たった四杯で夜も眠れず」と書き解説する。
この時間の主な説明内容は以下のとおりです。
- 上記の狂歌の解説を丁寧にする。ペリー来航1603年・上喜撰(蒸気船)・夜も眠れず(カフェイン)など
- 魔法瓶について 構造・Aradinというネーミング・昔はガラスで作ったなど
- 物質の分離法の一つである抽出の説明
この時間のねらいは、教室にピクニック気分の魔法瓶などを持ち込み「何が始まるのかな?」という関心を誘うことです。上喜撰が宇治茶のブランドであることや魔法瓶の真空二重構造の説明をくわしく話し、あまり「化学」を色濃く出さずに終えます。
できるだけソフトに化学は難しくないよというメッセージを送ると同時に、「この時間なにか楽しそう」と感じてもらうことがねらいです。
今回のまとめ
- 生徒の到達状況を知らないと授業の進め方は決まらない
- 学校には「教務内規」がありテストの平均点範囲なども明記されている
- 平均点の範囲を決めているのは生徒の理解度に合わせたテストをするため
- 分かる授業というのはきちんと聞かせられる授業
- 運転免許試験場では講習をきちんと聞かせる工夫をしている
- 学校の授業はでは実験道具などを使って生徒の興味関心を引き出している
ともすれば注意がそれがちな教室の授業でいろいろな工夫をすることによって生徒の興味関心を引き出すこともできそうに感じてもらえたら嬉しいのですが。