これがわかれば高校の化学基礎はバッチリ!!酸化数なんて怖くない!

高校の化学基礎の早い時期にイオンの生成という話が出てきます。ここで、詰まることが結構あるようです。ややこしさの原因は、イオンができるときに電子という粒子が出たり入ったりすることによるのですが、問題は、この電子という粒子が、マイナスの電気を帯びているということにあります。

電子というマイナスの粒子は、原子の一部を構成していて、これを失うと原子はプラスになり、もらうと原子はマイナスになるという、まるで、マイナスのお金(借金)のような存在なのです。このややこしいマイナスの粒子(電子)の移動をもとに酸化・還元反応をスッキリと説明しようとするのが、ずばり「酸化数」なのです。イオンの生成をおさらいして、酸化数をバッチリ理解しようではありませんか。

スポンサーリンク

安定な原子、不活性気体

ここでは、高校の化学基礎を一度習ったことのある方向けの、酸化数の解説をしたいと思います。酸化数が何者かということが中心になります。そうだそうだと、頷いていただければ幸いです。まず、おさらいの最初は、He(ヘリウム)Ne(ネオン)Ar(アルゴン)の性質から。これらは反応性が乏しいことから「不活性気体」と呼ばれています。なぜ「不活性」なのかを調べてみましょう。

まず、原子核の周りの電子収容数は内側からそれぞれ最大(2個・8個・18個・・)と決まっています。

原子番号はHe→Ne→Arの順に2、10、18でしたね。そして、電子の数も2、10、18で、電子の配置の内訳は原子核に近い内側から次のようになっています。

  • He ( 2 )
  • Ne ( 2  8 )
  • Ar ( 2  8  8 )

これらの原子の電子配置の共通点を見ると、Heは2個で満杯、Neもその次が8個で満杯です。Arの場合は3つめの8個が安定数の8となっていて、どれも「一番外側の電子が満杯または8個」という形になっています。これが、この原子たちの安定性(不活性)の原因と考えられています。

ちなみに、原子番号は原子の持っている陽子(プラスの粒子)の数で電子(マイナスの粒子)の数と同じになっていて、プラスマイナスゼロ(電気的に中性)が原子の特徴です。例えば、Heでは、陽子が2個・電子が2個、Neでは、陽子が10個・電子が10個で、どちらもプラスマイナスゼロですね。

電子の数が減ったり増えたりして、このプラスマイナスゼロの状態を崩した状態の粒子をイオンと呼んでいます。電子の増減は、増減した結果電子配置が不活性気体と同じようになって、安定な状態になる事によって起こります。

不活性気体より電子1個多ければ

Neより電子が1個多いのは、「・・ボクのお舟」の次でNa(ナトリウム)ですね。電子配置を先程の例で書くと、Na ( 2  8  1 )となります。

Naを人に置き換えたら、何というでしょうか?きっと、「最後の電子1個がなければNeと同じように楽な(安定な)状態になれたのに」と言うでしょう。

陽子の数は変えられませんが、電子はいくつかの層状になって存在する一番外側では放り出したりもらったりできます。Naの電子1個をもらってくれる相手がいたら、Naは一番外側の電子1個を放り出して安定なイオンになることができます。

その結果、Naの陽子は11個で電気的には+11、電子の数は1個減って10個で電気的に-10。差し引き+1の電荷を持つので、できる粒子は Na+(ナトリウムイオン)と言います。

不活性気体より電子が1個少ないと

Arより電子が1個少ないCl(塩素)の場合を考えてみましょう。電子配置を書くと、

Cl ( 2  8  7 )となります。

ClもNaと同様に喋ることができたら、「電子がもう1個あったらArのような安定な状態になれるのに」と言うことでしょう。というわけで、Clの場合は他から電子1個をもらうことができたらArと同じ電子配置となりこれも安定なイオンになることができます。

確認しましょう。Clの陽子は19個で+19、電子の数は1個もらうと20個で-20。差し引き-1の電荷を持つことになるので、できる粒子は Cl(塩化物イオン)と言います。

NaClは安定な物質

ここで、NaとClが電子1個を互いにキャッチボールしたと考えます。Naが余った電子を1個Clに投げたのです。その結果、どちらも安定なイオンになることができました。

それが、どれだけお互いの安定のために役に立っているかを考えるために、それぞれの単体の性質を調べてみました。

  • Na:常温で水と激しく反応する金属 水溶液は強い塩基性を示す
  • Cl:常温で黄緑色の刺激臭のある気体 水によく溶け、空気より重い 反応性が高くきわめて毒性が強い

こうして見るだけで、NaやClは反応しやすい危険なものだということが感じられます。高いところから低いところへ水が流れるように、化学反応もより安定な状態に向けて起こるのが自然界の仕組みです。NaやClに比べて、NaやClがイオンになってできたNaClは安定な物質です。どちらのご家庭でも食卓やキッチンに「食塩」として存在しますね。基本的な調味料として口に入れる事ができるくらいの安定した物質です。

酸化数とイオンの関係は?

酸化反応の例を上げてみましょう。酸化反応と書きましたが、一般的には、受身形で「酸化される反応」という意味で使われます。

眩しい光を放つことで有名な、マグネシウムの燃える(酸化される)反応で、反応式は次のようになります。

2Mg + O2 → 2MgO

この時、電子のキャッチボールがきちんと行われているとすれば、

  • Mg(原子番号12)の電子配置が( 2  8  2 )・・Neより2個多い
  • O (原子番号8)の電子配置が( 2  6 )・・Neには2個不足

という状態なので、Mg と O は、電子2個のやり取りをし、MgOという別の物質に変化してその中で Mg2+ と O2-になっています。

  • 反応式の左の 2Mg と O2 は 電子をやり取りしていない状態
  • 反応式の右の 2MgO は電子のやり取りを行った状態

ということなので、出入りした電子(マイナスの粒子)との関わりを数値に表すと、

  • 電子のやり取りをしていない単体の2Mg と O2 は電子の出入り無しで 0(ゼロ)
  • 電子を2個失った Mgは +2  電子を2個得た Oは -2

と考えることができます。このように、電子の移動によって変化した原子の価数(元素記号の右肩にある数値)を酸化数と呼びます。

この反応式に登場した事柄を整理しますと、酸化されるということを何通りかの言い方で表すことができます。

  • Mgは燃えたので、酸素と結合することを酸化されたといえる
  • Mgは電子を失ったので、電子を失うことを酸化されたといえる
  • Mgは酸化数が0→+2となったから、酸化数が増えることを酸化されたといえる

世の中にはものが燃える反応ばかりでなく、燃えない反応もたくさんありますが、電子の移動をもとに考えると酸化数の変化によって酸化された物質がどれかの判定が容易にできることがわかります。

スポンサーリンク

相手に応じて酸化数は変化する

酸化される物質の相手は常に還元される物質ですが、電子の出入りと酸化数の増減に関して酸化・還元反応のまとめをしますと、

  • 酸化される :電子が奪われる・酸化数が増える
  • 還元される :電子をもらう ・酸化数が減る

となります。また、基本的な酸化数の約束を上げておきます。

  •  単体元素の酸化数は0(ゼロ)
  •  化合物中の構成原子の酸化数の合計は0(ゼロ)
  •  化合物中では H=+1 O=-2とする
  •  イオンの酸化数は基本的にイオンの価数

ここで少し酸化数の約束を練習してみましょう。C(炭素)やS(硫黄)などは色々な化合物を作りますが、相手に応じて酸化数は変化します。SO2とH2Sでは、同じS原子でも結合の相手が違っています。化合物中での酸化数はどうなっているでしょう。

  • SO2   Oの酸化数が-2で(-2)☓2 これにSの酸化数を加えて0だから、S=+4 
  • H2S  Hの酸化数が+1で(+1)☓2 これにSの酸化数を加えて0だから、S=-2

となり、もとのSに比べて、SO2 のSは酸化されていて、H2SのSは還元されています。相手との力関係なのですね。

今回のまとめ

  • 高校化学基礎は不活性気体の電子配置の特徴理解からスタート
  • イオンの生成は電子(マイナスの粒子)の出入りがややこしい
  • He・Ne・Arのような安定な電子配置を目指して電子を失ったりもらったり
  • イオンになると安定な電子配置になる
  • 酸化還元の状態は酸化数で考えるとわかりやすい
  • 酸化数は相手によって変わるもの

電子がマイナスの電荷を持つということが、話をややこしくさせる根本問題だと思って、この話をするときとても気を使います。お金で考えれば話が早いのですが、そもそも、マイナスのお金というのはどうしても考えにくいものです。

スポンサーリンク

シェアする

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

フォローする