高校など、学校の先生方の仕事分担に分掌と呼ばれるものがあります。教科などに分かれて授業を担当するのが基本的な仕事なのですが、学校運営上の分担が別にあってそれを分掌と呼んでいます。
それぞれの分掌のことを仕事内容がわかるように「教務部」とか「進路指導部」とか呼びます。生徒の健康や保健衛生のことなどを担当する分掌は、保健室が中心となり「保健部」と呼ばれることが多いようです。
保健部の担当する学校行事は、その性質から考えても、年度初めに集中することが多くなります。みなさんもご記憶にあるように、年度初めに身体計測や内科検診、X線検診に歯科検診、そして、心電図もとりましたね。高校の健康診断(略して健診と呼ばれます)全般に関して、新学期の多忙な保健部の働きを見てみましょう。
防災訓練と健康診断をセットにして
健康診断の内容はどこの学校でも共通なのですが、私の勤務校では、身体計測と視力・聴力検査、そして、歯科検診を同じ日に実施していました。日程の設定は学校によって違うのですが、いかにして全部のスケジュールを最短の日程でこなすかというのは、担当の養護教諭の肩にかかって来ます。
ということで、健康診断だけでは時間的に中途半端なので、健康診断の日の朝から防災訓練を実施していました。この組み合わせは時間的なムダがなく、ここしばらくパターン化して続いているものでした。
スムーズな生徒の流れが決め手
健康診断の日は学校全体が一つの動きをするのでスムーズな流れが重要です。生徒は10人程度の班単位で決められた順番にメニューをこなして回ります。班長は班のメンバー全員の記録用紙を持って移動し、終了した検査項目には担当教員のチェックをもらいます。何処かで詰まると渋滞が起こりますので、それをスムーズな流れにするために長年のノウハウを活かします。
- 係りの教員配置は前年度と基本的に同じとする(慣れを優先)
- 前日に係りの主担者と作業内容を確認し合う
- 万が一、行き過ぎた渋滞が起こった時は、バイパスに誘導する
こんな風に全体の流れは、上手くコントロールされているのですが、それぞれの担当の係りにもそれなりの苦労はあります。歯科検診の係りの仕事をちょっと覗いてみましょう。
歯科検診の係りの仕事
- 前日に
- 歯科検診用の理科実験室に、歯科医師5名用の椅子と照明器具を準備
- 応用微生物実験室の機械で歯鏡全数を滅菌。(歯鏡は生徒数完備)
- 当日は
- 生徒誘導係2名が廊下から生徒を理科実験室に少しずつ誘導する
- 使った歯鏡は順次入れ替え、使ったものは洗浄に回す
歯科検診は、検診時に水と電気と記録用のテーブルがどうしても必要なので、条件の揃った理科室を管理する教員とのつながりも、大切にしなければなりません。歯科検診でもいろいろな苦労をしているのですが、歯科医師5名を確保することも養護教諭の大事な仕事なのです。養護教諭の先生も渉外をしているな!を実感します。
健康診断の班の班長は検査項目全部にチェックをもらったらそれを保健室に報告し、全部の班の報告が揃った段階で健康診断は終了となります。例年、防災避難訓練と健康診断を合わせて、午前中に終了します。
内科健診・X線検診そして心電図
健康診断の日は、基本的に男女混合で動けましたが、あとに残った内科検診等は男女別行動になります。女子の付き添いは当然女子教員ということになりますから、係りの割当も煩雑になります。
また、内科検診は少しずつ進行するので、授業時間のロスをできるだけ出さないようにするため、授業時間中に次のクラスの呼び出しをしなければなりません。そのためには、実習・実験等のある教科・科目には事前に検診の予定される時間帯の授業実施教室の調査も欠かせません。
また、内科検診では、心電図の測定と密接に関係する心雑音のチェックも聴診でするため、検診会場での静かさの維持には特に気を使うのです。大きな声を出さずに生徒を静かにさせるわけですから、これは本当に神経を使う作業です。
X線検診、1年生の心電図の測定と日程は続き、少し間を置いて次は全校生徒対象の「一次尿検査」があります。尿検査の検体を全員に出させることが、これまたひと仕事です。
一次とありますように、「一次尿検査」と心電図測定は、スクリーニング(ふるい分け)検査になるため、問題があれば「二次尿検査」や「二次心臓検診」がおこなわれます。このように、ほとんど7月半ばまで、一連の検診関係の行事は続いていきます。
今回のまとめ
- 高校など学校の健康診断は学年始めに行う
- 身体測定や歯科検診、そして、心電図測定も
- 健康診断は日を決めて一斉にやるのが合理的
- 内科検診は静粛に!心雑音聞き漏らすと大変!
- 健康診断関係の一連の日程は7月半ばまで続く
1995年の法律改正で、小中高等学校の1年生に心電図の測定が義務化されました。それ以降、児童生徒の突然死の報告が目に見えて減少したそうです。