水兵リーベ、ぼくのおフネ・・高校で習う懐かしい呪文でございます。ここまでは意味も通って語呂もなめらかで、鼻歌を歌うように覚えたものでしょう。
ところが、もう少し化学(今は化学基礎と言います)の時間が進むと、原子や分子の構造や化学反応式、さらに、モルなどというものが出てきて、目の前が暗くなった方もいらっしゃるのではないでしょうか。物事の見方を少し変えるとわかりにくかったものもよく見えてきたりします。化学反応式の作り方をゆっくりご一緒に考えてみましょう。
化学反応式はパズルと思うべし
高校の化学は、週に2時間か3時間の化学基礎という科目で学習します。化学反応式を作るということが夏休み明け頃に登場するのですが、これを難しい学問と考えると気分が重くなります。幾つかルールのあるパズルとお考えいただきたいと思います。化学反応式のルール(最初に必要なもの)は次のようなものです。
- 反応物は左に書き、生成物は右に書く。間を右向きの矢印でつなぐ。反応物は反応前の材料で生成物は反応でできるものですね。
- 物質は化学式で書くが、一種類の成分でできている単体は自然に存在している形で書く。気体の単体は原子2個でできているものが多い。(水素 酸素 窒素 塩素・・)
- 矢印の左右に同じ元素は同じ数だけあるように物質の前に数値(係数)をつける。
- 係数は当てはまる整数の中の一番小さいものとする。
化学反応式を作りましょう
水素と酸素が反応すると水ができる化学反応式を、早速化学反応式のルールに従って作ってみましょう。
まずそれぞれの化学式は次のようになります。
- 水素:H2(H原子2個)
- 酸素:O2(O原子2個)
- 水:H2O(H原子2個とO原子1個)
それぞれいくつ必要か不明なので数は( )で隠しておいて反応式を書くと
( ① )H2 + ( ② )O2 → ( ③ )H2O となります。
ここでやることは、→の右と左でHとOの数が一緒になるように①②③の数字を決めればいいのですね。ここでルールの4(係数は当てはまる整数の中の一番小さいものとする。)を思い出していただきましょう。①②③の数値(係数)は一番小さい整数でしたね。
仮に①を1とすると、Hの数から③も1となってうまく行きそうですが、Oの数が1個となって、②が0.5になるのでアウト!
と言うことで、全体を2倍して ①=2 ②=1 ③=2となります。
元素記号を食べ物に置き換えてみます
元素記号を食べ物に置き換えて、水素Hは、酸素Oは
とします。話は
と
の数合わせに変わりました。
そうすると、H2は(・
) O2は(
・
) H2Oは(
・
・
)となります。
言い方を変えるとH2はリンゴ2個入りパック O2はおにぎり2個入りパックとなります。
また、H2Oはリンゴ2個とおにぎり1個のパックとなります。
ここから何をすればよいかというと、ルールの3(矢印の左右に同じ元素は同じ数だけあるように物質の前に係数をつける。)に従って一番少ない数の(・
)パックと(
・
)パックをばらして、上手く一番少ない数の(
・
・
)パックを作ればいいのですね。
問題は次のように変わります
食料品店にはりんごもおにぎりも2個入りパックしかおいていません。これらを、半端の残りを出さずに(・
・
)パックを一番少ない数作りたい。りんごとおにぎりの2個入りパックをそれぞれ何パック使えばいいでしょうか?
これを図にします。
( ① )(・
)+ ( ② )(
・
)→ ( ③ )(
・
・
)
これも仮に全部1をいれてみると
( 1 )(・
)+ ( 1 )(
・
)→ ( 1 )(
・
・
)
②のところのおにぎりが多すぎるという感じがよくわかります。
したがって、仮に②=1とすると、おにぎりの数から ③=2、りんごの数が③と①では同じなので①=2と答えが出てきます。どう見てもこれより小さい整数はありませんね。
( 2 )(・
)+ ( 1 )(
・
)→ ( 2 )(
・
・
)
したがって、(・
)2パックと(
・
)1パックをばらして(
・
・
)を2パック作るが、ここの答えになります。
リンゴとおにぎりをもとの元素記号に戻すと、水素と酸素から水ができる化学反応式の出来上がりです。
( 2 ) H2 + ( 1 ) O2 → ( 2 ) H2O
リンゴはリンゴだけで考える
化学反応では原子の組み合わせは変化しますが、もともとあった原子は増えたり減ったりはしません。したがって、このリンゴおにぎりヴァージョンでも、リンゴの数だけ、おにぎりの数だけを別々に数えたらいいのですね。
ちょっと別の例を見てみましょう。
水素(H2)と窒素(N2)が反応してアンモニア(N H3)ができる反応です
もとになる式を作ります。
( ① )H2 + ( ② )N2 → ( ③ )N H3
これも仮に①②③すべてに1を入れてみます。そうすると、左のHもNも2個になりますが、右のNは1個、Hは3個となって、全く合いません。
①②には何を入れても数が偶数になることに気づいたら、③=2が決まりそうですね。③=2とすると、右側ではNが2個Hが6個となります。これをもとに、Nが2個だから②=1、Hが6個だから①=3となり次の式ができます。
( 3 )H2 + ( 1 )N2 → ( 2 )N H3
いかがでしょうか?H2と言うよりは(・
)とした方がとっつきやすいのではないでしょうか。要は数合わせのパズルにすぎないということを分かっていただきたいのです。
今回のまとめ
- 高校の化学基礎でつまずきやすいのが化学反応式
- 化学反応式の作り方は決して難しくない
- 難しく考えずにパズルを解く感覚で気楽に考える
- 化学式は横において食べ物で考えてみましょう
- 反応の前後で同じ原子は同じだけあるのが大原則
- 化学反応式の係数は一箇所決まったら、順に決まって行くことが多い
毎年、化学反応式の作り方で悩む生徒がいましたので、行きついたのがこの方法です、話をお金や食べ物に置き換えたら、結構頭に入って来るものです。