運動会の季節といえば、少し前は体育の日が10月10日だったこともあって、運動会のはじめの挨拶も「爽やかな、この秋晴れの空のもと・・・」という感じで、秋が一般的でした。時は移り、最近は熱中症対策も重要視されて「秋運動会」と「初夏運動会」に大きく二分しているようです。
もう随分前から応援合戦が高校の運動会の華として定着しているようですが、最近は歌って踊れるアイドルグループの影響で応援合戦はダンス大会の様相を呈しています。それも、年を追ってレベルが向上してきているようです。運動会はどのように準備され、行われるのでしょうか。応援合戦を中心にその実態を見ていきましょう。
運動会は秋それとも初夏?
運動会は基本的に晴天のグラウンドで行います。アイドルグループ顔負けの激しいダンスの動きを高校生たちは炎天下で行います。熱中症の心配も当然深刻な問題で、秋の運動会でも初夏の運動会でも頑張りすぎれば事故の可能性は増すのですが、それぞれの言い分はどうかというと。
「秋運動会」派の主張は
- 秋の方が比較的天候が安定して晴天の日に恵まれやすい
- 夏休み期間もあり、日程的に秋の方が準備をしやすい
「初夏運動会」派の主張は
- 秋に文化祭と運動会を行うと準備が重なって大変
- 残暑の季節より初夏の方が熱中症は起こりにくい
と決定的な決め手はなく、さらに、秋に進路行事が多いことから、進路指導部や3学年担任団の思惑も絡み、学校によっては秋にやったり初夏にやったりと様々です。
応援団と立て看板係
私の勤めていた高校の運動会は5月末実施で、一学年5クラスが三学年縦割りの団を作って、すべて団対抗で行われました。クラスの中で希望によって、応援団と立て看板係のどちらかに所属します。どうしても踊りたい生徒と、踊りは苦手という生徒がいるわけですからこんなふうに住み分けが長い間にできてきたようです。
立て看板係は、縦3.6m横3.6mの立て看板に団を象徴する図柄を原画の案から起こして色塗りし、仕上げます。各団の立て看板係は運動会当日まで他の団に意匠・図柄がバレないように特別教室の奥でひっそりと看板作成に取り組みます。
応援団は3年生が中心となって曲選び、振り付け(個人及び全体の流れ)練習計画の作成等に追われます。5月の連休明けから全体の練習が動き出しますから、実質3年生になった4月初めから3年生のリーダー達はフル回転です。
リーダー達の顔を見ていると、踊りたがる生徒ほど何故か勉強が苦手というディレンマを抱えているものが多く、運動会の後に続く中間テストを考えると、3学年の学級担任の心中は穏やかなものではありません。
運動会の本番一週間前にはグラウンド全面を使ってリハーサルの割当がありますからそれまでに1年生を含む全員が踊りを完成しなければならないのです。
寸暇を惜しんで練習
この期間は年間を通じて遅刻が最も少なくなります。放課後の練習はもちろんのこと、朝の一時間目前の「朝練」も学校のちょっとした広場でやっているからです。本番で他団の生徒や見物の保護者の方たちの前で無様な姿は見せられないという点ではすべての生徒の気持ちは一つになっています。
過去に練習がエスカレートして、生徒の帰りが遅くなり保護者からの抗議が相次いだことがありました。そのため、下校時間後に公園等で練習をすることは禁止になっています。
それでも、時々その禁を破って近所の公園で練習をする生徒たちが出ます。高校生の集団が大きな音で音楽を鳴らして踊るのですから周りの住人にとっては迷惑な話です。すぐに学校に苦情の電話が入ります。こんな風に生徒たちはジリジリ焦りながら練習を重ねていきます。
リーダー達のダンスが見せ場
以前よく見られた学生服や柔道着を着たちょっと硬派のマスゲームタイプは、もはや少数派になりました。グラウンド全体を使い、音楽に乗って隊形を変えながら、要所々々でリーダー達のダンスを見せるというのが主流です。
基本的な流れは、アイドルグループのダンスに多くのバックダンサー達がつくという感じで、リーダー達のダンスの出来具合が得点に大きな影響を与えます。リーダー達はここぞとばかりに練習の成果を発揮します。この時、周りの1・2年のメンバーも来年は自分たちが踊るんだと気持ちを新たにします。
ダンスの上手い下手には生徒たちも敏感ですから、審査員のメンバーも気が抜けません。汗と涙の練習で仕上げた応援合戦も、ひとチーム5分間の熱演であっけなく幕となります。昼休み後最初のプログラムで応援合戦をしてから、最後の結果発表までがハラハラ・ドキドキの楽しみな時間なのです。
今回のまとめ
- 高校の運動会、応援合戦はダンス大会
- 運動会は秋ばかりか初夏にも
- 応援団リーダーは超多忙
- 縦割りの団構成で次の年へつなぐ
ヘトヘトに疲れた応援団のリーダー達。この間の働きで人間として一回りも二回りも成長した感じがします。