よく学校を遅刻・欠席する生徒が、アルバイトでは全く遅刻しないできちんと勤務しているという信じられない話があります。高校生でこんなに遅刻していて、社会に出たらどうするの?と生徒に言ったりしますが、この生徒の場合は社会の厳しさをよくわかっているように見えます。
高校では、遅刻が同じ曜日に重なって同じ科目ばかりを欠席したり、一定日数以上欠席が多くなると進級・卒業ができなくなるという規則が作られています。中には、学校に行きたいけど、行こうとすると腹痛が起こったりして行けない、いわゆる「不登校」と呼ばれる生徒も存在します。高校での欠席・遅刻への対処はどんなものか見てみましょう。
無断欠席はありえない
一般社会と同じように、高校でも「無断欠席」「無断遅刻」は重大問題です。基本的に保護者を通じて電話連絡等で学校に届けが入ります。
遅刻・欠席で、よく高校で考えられる図式は、次のような問題展開です。
- 欠席日数が多く、進級規定に触れて進級できなくなる。
- 遅刻・欠席が多く、単位数の少ない科目の欠席時数が増えて進級不可となる。
- 遅刻・欠席が多く、そのため学習内容についていけず成績不振となる
1の場合は誰が見てもはっきりとわかる問題点が存在しています。学校に来ることができないのですからその原因を根本的に解決しなければ、問題は解決しません。事故で入院などという理由で学校に来ることができない場合はその原因の解消を待つしかありませんが、時間が解決してくれます。
不登校の原因となるのは
問題になるのは、学校という集団に馴染めないなどという精神的な要因で登校できない場合です。こういうことを表す言葉として「不登校」という言葉を使っていますが、「不登校」の言葉の中に原因は分からないがという意味も含めて考えられています。
不登校の原因となるのは、クラスの中の人間関係から生じるいろいろな問題であることが考えられます。人間の物事の受け止め方は千差万別で、ある生徒が何気なく言った一言が、他の生徒にとっては衝撃的な言葉であったりします。
よくあるケースですが、友好的な人間関係にあった生徒間で、ある日誰かの一言で、その友好的な関わりが嫌悪する人間関係に変わったりします。残念ながらこういう人間関係の変化は目には見えにくいものです。
嫌悪を感じて、または嫌悪感を与えてグループを離れた生徒はクラスの中に居場所を保ちにくくなり、極端な場合には、暴力的な事件が起こったり、「いじめ」の関係を形成したりすることにもなります。こんな風にならなくても、クラスに居づらくなった生徒は「不登校」に落ち入ることになりやすいものです。
不登校はある日突然に
「不登校」は往々にして、突然始まります。そして、その大部分は原因がわかりません。
欠席がある日始まって、家庭からの連絡は体調不良ということが多いようです。実際、家庭でも子どもが急に学校に行かなくなって困惑しているというのが実情なのです。下手をすると、生徒本人にもなぜ学校に行けないのか説明できないという場合が多いのです。
食欲不振とかの体調不良が伴えば医者に相談ということも考えられますが、たとえその食欲不振等が癒されても「不登校」が解消することは少ないようです。
カウンセリングを受ける
学校としては、学級担任が窓口として対応しますが、それはいろいろな道筋を提示することしかできません。それを参考にして保護者と本人が何をするか決めなければなりません。
まずは、カウンセリングの専門家のカウンセリングを受け生徒本人の抱えている問題を明確にしなければなりません。この段階で、本人が自分の持っている問題点を直視することができて解決に進むこともあります。
カウンセリングを受けて解決の方向に向かわなかった場合、次の段階は精神科医の診察を受けることになります。ただ、現実の日本の社会では精神科にかかるということは大変なことのように取られて抵抗もあるため、「心療内科」の看板を上げた精神科のクリニックを受診することが多いようです。
診断書をもとに適切な処遇を
多くのケースでこの段階まで来るのに結構な日数がかかっているもので、精神科の診察を受けた段階で診断書をもらって学校に提出することになります。
学校にはこういう生徒の取り扱いを相談する委員会が設置されていて、医師によって書かれた診断書をもとに、その生徒にどのような処遇をするのが良いかを検討して職員会議に提案します。多くの場合、生徒の処遇は年度末の進級・卒業判定の会議で決まることが多いようです。
遅刻には迅速な対応を
遅刻の問題は欠席の問題より程度は軽いと言っても、それによって起こるかもしれない結果は重大です。対策として重要なのは次の事柄です。どんなことでも、問題があれば早期に対応するのが鉄則ですね。
- 遅刻の弊害をクラス全体に認識させる
- 遅刻して入室する者がいると授業が中断して全体の迷惑となる
- 当然遅刻した分だけ遅刻者本人の学習が遅れる
- 遅刻の目立つものには個人懇談をしてその原因を確認し、改善方法を一緒に考える
- 個人懇談の結果と内容は家庭と共有し、家庭の協力をあおぐ
遅刻の問題はきつく叱ったりして改善できるものではありません。学級担任がゆっくり話を聞いて、対策を考えていくしか道は無いと考えられます。
今回のまとめ
- 学校でも社会と同じで遅刻・欠席は厳しく指導
- 生徒本人は学校に行きたいのに行けない「不登校」がある
- 「不登校」にはカウンセリング等いろいろな対応がある
- 「不登校」の生徒には診断書に基づいて適切な処遇を考える
- 遅刻も重なると大きな問題につながる、早めの対応が必要
農業高校の1年生の秋に担任をしている生徒が不登校になりました。家庭訪問を繰り返して分かったことは、農業実習がとても嫌だったということでした。良かれと思って農業高校に入れた保護者と本人の思惑のズレでした。
本人の意志を確かめて方向転換することになりましたが、場合によっては、このように退学して別の道を選ぶ方法が有効なこともあります。