高校の中には教室以外に保健室という特別な空間があります。そこは、ちょっと薬品の臭がしたりして教室とは違って、人によっては安らぎを感じる場所でもあります。生活指導室や職員室そして、進路指導室のように緊張の要らない空間なのです。
そこには、難しい教科を教える先生ではなく求めれば話を聞いてくれる養護教諭の先生がいるわけですが、養護教諭はケガをした生徒の手当をするのは勿論、何らかの原因で「しんどい」と感じて保健室を訪れる生徒の話を聞きそれに対応するのがとても大切な仕事となるのはご存知でしょうか?
ここでは、そんな保健室の先生について、優しいのか、実は厳しいのか、保健室の役割とともに見ていきましょう。
学校内ではいろいろな事故が起こります
学校ではいろいろな事故が起こります。基本的には生徒のケガなどですが、それに関わるのが保健室と養護教諭の先生です。体育の授業では柔道やラグビー、サッカーなどの接触プレーの多い種目などもやるわけですから、少々のケガは避けて通れません。また、化学実験中のガラス等による切り傷・火傷などもよく発生します。
事故が発生すると、生徒はまず保健室で手当されます。その後は医療機関にかからなければならない場合もあるので養護教諭は次のように行動します。これは高校での話です。
- ケガ等の状況を見て通院の必要ある無しの判断
- 必要な場合、学校指定病院へ電話で状況説明と受け入れの依頼
- タクシーを呼んで生徒の搬送
保健室の壁等よく見えるところに学校指定病院の電話番号が一覧で掲示されているものです。また、当然のようにかなり以前から保健室には外線電話が引かれています。
学校の規模に応じて養護教諭は二名配置されていますので、病院へ行く場合は養護教諭一名が生徒に付き添うことになりますが、救急車を依頼することは滅多にありません。
たまに、こういうケースが重なったとき養護教諭が二人とも出払ってしまうことになります。そんな場合に備えて養護教諭以外の保健部の教員が保健室当番という名目で保健室に詰めています。こんな風に突発的な事故に対する体制はどこの学校でも組まれています。
保健室を訪れる生徒のケースは色々
ただ、ケガの手当のようにひと目見てわかるものは対応しやすいのですが、「しんどい」と訴えて保健室を訪れる生徒が多いことも確かです。生徒の言う「しんどい」の中身にはいろいろなケースがありまして、保健室の本来の仕事はこの「しんどい」生徒たちへの対応であるといえます。
「しんどい」と保健室に来る生徒には次のようなケースが考えられます。
- 体調不良で熱等があるもの
- 長時間のアルバイト等で疲れているもの
- 悩み事があって気分がすぐれないもの
- 教室の人間関係に疲れて保健室に避難したいもの
この他にもいろいろなことが考えられますが、生徒の訴えに耳を傾けなければ話が始まりません。多くの学校で授業時間中の保健室来訪は禁止していますので、休み時間になるとこういう「しんどい」生徒が保健室にやって来て養護教諭は対応に追われます。特に、クラス替えの行われた新学期の始まった頃や気温の寒暖の激しい時にその数は多くなります。
実際に熱があったりして保健室に来る生徒もいます。ひどい発熱時には、家庭連絡をして迎えの依頼をしたりします。保護者の方の都合がつかず放課後になる時はやむを得ず保健室のベッドで休ませたりもします。でも、こんなケースは風邪の流行っている時くらいで日常的にはあまり見られません。
養護教諭は生徒の「しんどい」に速やかに対応
私も保健室当番を経験してその光景を間近に見ているのですが、授業の間の10分の休み時間や昼休みに養護教諭は猛烈な勢いで生徒の対応をします。保健室を訪れる生徒たちは誰もが話を聞いてほしいのです。養護教諭は生徒の話を聞いて、その内容を分析しながら対応を判断して適切に返事をしていきます。ベテラン養護教諭の頭の中には生徒の話を少し聞いただけでなすべき対応が浮かぶようです。
- 一言励ましてほしいだけの生徒には大声で「大丈夫よ」と言って送り出す
- 複雑な内容のものには放課後のアポを約束して送り出す
- 訴えに応じて熱や血圧を測って大丈夫と確かめて送り出す
このように生徒への対応も、時には優しく・時には厳しくと生徒の訴えや状況に応じて使い分けが必要です。優しい顔を見せすぎると、保健室は現実逃避の避難所になってしまう可能性があり、そうなると、本当に保健室が必要な生徒が使えない状況になったりします。
今回のまとめ
- 学校の保健室で養護教諭の先生は生徒の事故に対応
- ケガをした時などのルーチンは出来上がっている
- 「しんどい」と訴えて保健室に来る生徒の対応が重要な仕事
- 「しんどい」という訴えの中身を養護教諭は的確に判断・助言
- 養護教諭は時には優しく、時には厳しく生徒に対応
現場の保健室では用事もないのにぶらりとやってくる「健康な」生徒を追い返すと言うのも仕事の一つになっています。そういう生徒は追い返されるという対応をされることである種の満足を得るようです。これも、養護教諭の仕事の一つかなと感じます。