何故か理科、特に化学や物理は難しいと思う生徒が多いようです。できるだけアレルギーを起こさせないように気をつけて新学期の授業を始めます。授業をはじめて3回目くらいの授業の内容です。
ひょっとしたら、この授業面白いのではないかと感じてもらいたくていろいろな実験小道具を用意します。最近防虫剤としてあまり使われないナフタリンを実際に体験させてナフタリンの昇華を理解させようとしています。
混合物の分離
化学基礎の授業の最初の頃の話です。まだまだ、化学嫌いの生徒を作りたくないので、クイズのような授業をします。
テーマは「混合物の分離」ということで砂糖といろいろな物質が混ざった状態のものから砂糖を分離しましょうという内容です。
実験の操作としては、ろ過、昇華、再結晶などを身近なものを使って学びます。
- 砂糖とガラス片
- 砂糖とナフタリン
- 砂糖と鉄粉
- 砂糖と少量の食塩
これを順番にやっていくのですが、1の砂糖とガラス片が終わって2の砂糖とナフタリンのところです。
ちなみに、1砂糖とガラス片は
- できるだけ少量の熱湯で砂糖を溶かす
- これをろ過してガラス片を除く
- 得られた砂糖水を加熱して水分を飛ばす
という段取りで、物質の分離法の一つである「ろ過」を丁寧に説明します。
ただし、砂糖と水は構造に似たところがあり水分を飛ばすといってもなかなか難しいという補足もしっかりします。
ナフタリンを実際に嗅がせる
さて、2砂糖とナフタリンに参ります。
ここで問題が出てきます。まず生徒は砂糖はわかっても「ナフタリン」がわかりません。
そこで、冒頭に用意しました写真のような小ビンのナフタリンを持っていって、教室の両側の先頭から順に回して「ナフタリン体験」をしてもらうのです。ビンの中のナフタリンは白い結晶状でしっかり封がされていますから、見たところ砂糖のような食塩のような感じに思えます。フタを開けて匂いを嗅いだ途端にぎょっとする仕掛けになっています。
ここで重々匂いのかぎ方などを注意します。
- 匂いを嗅ぐときはいきなり鼻の前に持ってこないで離れたところから手であおぐ
- 匂いを嗅いだら、どんな匂いか自分の感じたままをノートに書く
こう注意してから、ナフタリン体験がスタートします。
暫くの間、順にナフタリンの小ビンが回っていく間教室中大騒ぎになります。ちょっと隣のクラスを気にしながらもなるがままにしておきます。
あっちこっちで「これはなんとかの匂いや」とか「知ってる!」という叫び声が起こります。
生徒の書いたナフタレンの印象
- お人形の匂い:わかる
- タンスの匂い:わかる
- おばあちゃんの匂い:わかるけど、ひどい感じ
- 電車で横にいたおっさんの匂い:わかる
- タンスにゴンゴン:ゴンゴンは臭わないはずでは?
ナフタリンの正体は不明なものの、何かしら匂いからその用途は感づいているようです。
ナフタリンの分離方法は?
ここで正体を明かして次の説明をします。
- ナフタリンはもともとタンスの中に入れて防虫剤として使っていた
- タンスの中で固体から気体への変化をしてタンスの中に広がる
- この変化を昇華と呼ぶ
ここでどうすればナフタリンはなくなるでしょうかと問いかけると、あっちこっちから放っておけばいいという答えが聞こえてきます。
というわけで、砂糖とナフタリンの混合物は「放置」することでナフタリンは気体になって消えていくので、操作としては「放置」ということで一件落着。ただし、物質を構成する粒子の運動は熱を加えると大きくなるので穏やかに加熱するとナフタリンの昇華は促進されるということを補足します。
生徒たちの反応によって授業の進行がクラスによってばらつきが出ます。時間があるようなら、3砂糖と鉄粉やその次へ進みます。
今回のまとめ
- 化学の授業は難しくないというイメージを与えるようにソフトな導入を心掛ける
- ナフタリンを実際に実験させて昇華する物質であることに気づかせる
- 生活の中でのナフタリンの使われかたから分離法を考えさせる
タンスにゴンゴンなどと生徒は言うけれど、最初に出た頃は「タンスにゴン」だったのだとか、初期のコピーは「臭わないのが新しい」だったのだとか、歴史を感じる授業になりました。