高校の授業 説明が少々下手でも、聞かせることができればこっちのもの

人に自分の言いたいことを聞いてもらうためにはどんな工夫が必要でしょうか。分かる授業をしたいと思っても、生徒たちが聞いてくれなければ授業は成立しません。いきなり大切な話をしても話を聞く側の準備ができていなければ頭に入っていきません。
話の説明が少々下手でも、導入部分の設定をきちんとして聞かすことができたらこっちのものです。落語家はまくらという導入部から知らず知らずに本題に引き込んでいきます。

話を聞かない生徒もいますから時には注意することも必要です。でも、高校生と言っても半分大人です。いきなり怒鳴ったりしては逆効果で、おしゃべりはやめても、こちらの話に心を閉ざしてしまうことになります。生徒一人ひとりの名前を呼んで優しく注意することが重要です。たとえ注意をされても名前で呼ばれたら人格を認められたのですから気持ちは傷つかないのです。

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いきなり中身に入っていくのは乱暴です

授業は「生徒に聞いてもらってなんぼ・・」大阪弁でよく使われる表現です。つまり、話を聞いてもらって初めていくらかの(なんぼかの)値打ちが生じるということです。

授業の始まりをイメージしてください。休み時間の余韻を引きずっている生徒もいてどこかざわついている高校の教室です。話の続きをしたいものもいてざわざわしています。生徒の設定としてはあまり勉強が好きでなくどちらかと言うと全般的に苦手意識を持っている生徒が多いクラスです。
私の担当は理科の化学であまり好感を持たれる科目ではありません。こういう聴衆を前にしていきなり中身に入っていくのは乱暴です。聞くことを拒否されてしまいます。

授業のスタートでいつも頭をよぎるのが「落語のまくら」です。聴衆の気分をほぐしながら徐々に本題に誘導していく大切な落語の導入部分です。個人的には上方落語の桂米朝さんと桂枝雀さんをよく聞いたもので、名人たちは「まくら」部分から実に見事に落語本題の中に聴衆を連れて行きます。話の説明が上手いか下手かは別として落語の手法に学ぶべきだと思います。聞いてもらってなんぼの世界なのですから。

注意する時は個人名で呼ぶのが効果的

新元素のニホニウムが日本人によって命名されたと報道された事がありました。新聞記事をプリントして教室へ持っていき、これはすごいことだと強調したりしました。この時、「新聞見ましたか?」という感じでまくらにしました。「何?何?」と反応が来たらこっちのもの。とにかく授業の初めの部分でこっちを向いてもらうという作業が欠かせないのです。

準備をして考えて、まくらを語っているときに喋っている生徒もいます。心のなかでは(こいつ何で聞けへんのや)と思いながら、注意します。

この時決めていることは、決して怒らないということです。強く怒って話を止めさせても、話を止めただけでこちらの話を聴く気分にはなってくれません。また、語気荒く注意すると教室の空気が刺々しくなり雰囲気が壊れます。

したがって、できるだけソフトに注意します。特に「何々くんちょっと静かにしてね」と個人名をあげて注意するのが効果的です。「そこの喋ってる生徒うるさい!」といった不特定の相手に対する注意に生徒は反応しません。個人名で呼ばれたとき悪いことでもいいことでも人間は自分個人を認められたと実感します。

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人間として対等な立場で関わることが重要

これと関連して、一番はじめの授業で生徒のことを知るためのアンケートをします。アンケートの中には中学校でどんな実験をしたかとか、理科の中で好きなジャンルは何かとか聞きます。この時出身中学の名前も書いてもらいます。生徒の名前を覚えるときできるだけこの出身中学校の名前も一緒に頭に入れます。これによって、この子は大変な田舎暮らしだなとか賑やかな町中に住んでいるなとかおおよその生活環境が判断できます。

テストを返すときなどに田舎暮らしの生徒くんには「毎日、通学大変だね」と一言添えたりします。あ、この先生わかってくれてるという感じで、ニコッと笑顔を見せてくれたりもします。学校の教師は明らかにサービス業です。

こんな風に授業の入り口でうまく入ることができるかどうかが大切な問題ですが、話を聞いてもらうためにはやはりひとクラス40人の生徒とこちらの間の人間関係がうまくできていないとないといけないことを実感します。
何と言っても人間と人間の関わりですから、嫌な人間の言うことは聞きたくないものです。生徒にへつらうことはしませんが、上から目線ではなく人間として対等な立場で関わることを常に気にします。

今回のまとめ

  • 授業の説明が下手でも、導入はきちんと設定する
  • 聞いてくれなければ授業は成立しない
  • いきなり中身に入っていくのは乱暴、徐々に本題に誘導していくことが重要
  • 注意する時も褒めるとき同様名前で呼ぶと効果的
  • 上から目線ではなく人間として人間として対等な立場で関わることが特に重要

人に話を聞いてもらうということは大変なことです。高校の教師は下手な話をするとバタバタと生徒が眠り始めたりするので気が抜けません。落語を聞きに行くのも大切な研修の一つなのです。

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